緊急操作・・・・
F−1のコクピットに乗り込むと、操縦系はT−2の前席とほぼ同じだ、ライセンスもT−2と同じ
それで、T−2でCT課程を卒業したパイロットがF−1部隊に配属されても、あまり違和感を感じない
だろうと思われているフシがある。
とんでもない誤解だ。(ほんとうに、このF−1は誤解の多い戦闘機だよなあ)
確かに操縦は何とかなるかもしれない、しかし操縦出来たからといって、F−1部隊の任務が遂行
出来るかというと、全くそうではない。 車の運転が出来るからというだけではF1(フォーミュラーワン)
ドライバーになれないのと似ている。
恐ろしく複雑で難解な兵装アレンジ、各種兵器の諸元、攻撃パタンなどを全て頭の中にインプットし、
それを一瞬に、しかも的確にアウトプット出来て初めてF−1パイロットとして仕事ができる・・・
まさに「体でご奉仕」の自衛隊にあって、頭でもご奉仕しなければならない厳しい職種だ。
計器パネル左下の兵装コントロールパネルは、F−1の多種多様な兵装パタンが選択出来るように
なっている。
このタイトルの白黒写真でも確認できるが、HUD右の、まるでファントムのような形が描かれた
計器は、J/APR-3レーダー警戒表示装置で、T−2との大きな違いとなっている。
一見、同じような機体でも運用が違うと大変だ、F−1への指定通知を受けた学生に、教官が、
「T−2と同じだから大丈夫だ」なんて声をかけていたが、本人が大間違いだと気づくのに時間は
かからない・・・・、また、千歳を希望していたが、304飛行隊(築城基地)に決まり、ガッカリ
している学生に、「あそこは着艦手当てが出るぞ、よかったな」と慰められ、すっかり信じ込んで
赴任した間抜けな奴もいた(注意:私ではない )(築城基地の滑走路は海に突き出ており、不沈空母
と呼ばれていた・・・)
304飛行隊には、F−1部隊もあり、当時千歳に次ぐスクランブル発進の多い基地で、平均年齢が
若く、恐らく世界一の無事故記録を誇る基地であった。 今も記録を更新していることだろう・・・
左は、まだF−4EJの頃の304飛行隊のパッチ
F−1は、T−2をベースに後部座席部分にも電子部品を搭載したために、
まるでバスケットのゴールに頭を突っ込んで操縦しているような、後方視界の
悪さが指摘されているが、それよりも、F−1が、他の戦闘機と徹底的に違う
点が、「胴着禁止」というところだ。
機体構造上(主に高翼のセイで)、脚が出ないなどの緊急時に胴体着陸が
出来ないのだ、つまり、万一、そういう事態になったら、機体を捨て
ベイルアウトするしかない。
ベースになったT−2は、一時、射出座席の不具合があり、地上で射出する
危険が指摘され、当時パイロットの搭乗拒否という問題に発展したことがあった。
まさに、生死をかけた(文字で書くとカッコよくなってしまうが、当事者にはたまったものではない)仕事だ。
4空団の××飛行隊で、取材中の雑誌記者に「T−2の操縦で難しいところは?」と訊かれて
「座席の安全ピンを抜くこと」と言い放った学生がいた。
学生に限らず、T−2,F−1のパイロットに限らず、全てのパイロットは、いま、この時点で何らかの
トラブルが発生したら、あそこに落とそう、ということを常々考えている。
緊急時にパイロットがすることは、墜落の最後まで責任を持って被害を最小限に食い止めることだ、
そして人家のないことを確認したら最後の最後に、必ず脱出操作をする。
これは、そのまま突っ込んで機体もろとも殉職した場合、「脱出装置が働かなかったのでは?」
ということで整備員に不要な心労を与えない配慮からだ。
急降下爆撃・・・・
ジェット機の時代になって爆撃の様相も一変した、特に命中精度のよいとされた急降下爆撃は、
プロペラ機のような深い進入角度は取れなくなっている。
プロペラ機のように深く突っ込んでしまうと、速度が出過ぎてしまい、引き起こしの距離を見なければ
いけない、さらに500Kg爆弾が炸裂した時点で4、500mの範囲外に飛び去っていなければ、
自分の投下した爆弾で墜落するハメになる。
となると、上空1万ftあたりで、もう、爆弾を切り離して機体を引き起こさなくてはならない、結局、
そんな高いところから落としたのでは、どこに落ちるか判らないので、全く意味が無いということになる。
F−1では、およそ35度から45度で進入、この時、翼が水平になっていることが重要だが、
急降下状態では水平儀はあまりあてには出来ない、また、トリムをしっかりとるのが命中への近道となる。
爆弾は、切り離される瞬間の機体の動きの状況を、そのままずっと保持して落下するので、
安定した操縦が不可欠だ、ここにきて初めて教官に怒鳴られた意味が解かったりします。
部隊に配属されたばかりのTRパイロット(見習い)は、ここでも、徹底して、部隊の先輩から
訓練されることになる。
空対空射撃・・・・
最近は自衛隊も予算不足で、実弾射撃訓練は少なくなっている、トリガを引いた時に回り出す
ガンカメラの映像を解析して、命中何発と評価するのである。
で、コクピットの中で、狙いを定め、トリガを引き絞り、「ババババン」と声を出す(とほほ)
あまりの情けなさに涙が頬を濡らす・・・
それで、結果、一発の命中弾もない「0点」なんてこともある、これをパイロット用語で「スカンク」
という、または、「ゴルゴ零てーん!」などと、ひやかされる。
左は、築城基地6飛の部隊パッチとスカーフ
戦闘機パイロットが受ける訓練の全ては、最終目的である射撃である
全ての訓練が、この為になされるといってもいい、敵機を確実に落とす
ことで、他国からの(主に空からの)侵入を防ぐことになるからだ。
バンナー(またはフンドシ)と呼ばれる、布状の標的を曳航して射撃訓練
する場合の飛行については、射角、発射位置など厳格に決められており、
色々何でも試してみたい年頃の青年には不満が募る、
しかし、これは過去に数人の学生が、標的ではなく標的曳航機の方を撃ち抜いた
という事故から、こういうことになっていると聞いた。
標的を曳航するのも命がけ、まさに実戦さながらの訓練だったということである。
ロケット発射・・・・
爆弾投下やスパロー、サイドワインダーなどの発射は「射撃」とは呼ばない。
ロケット弾の発射は、バルカン砲の発射と同様、「射撃訓練」の範疇だが、これが全く当たらない、
命中させるためのパラメータを一つ一つ挙げていくと、「運」としか言いようがない、と思うくらいだ。
だから、ロケッド弾のランチャー(発射装置)は、19本が一度に撃てるようになっており、
そのランチャーポッドも6本まで積むことが出来る、それを、一斉に撃って、有効弾を得るというのが、
この兵器の標準的な使用法のハズだ。
しかしながら、予算の乏しい航空自衛隊は、このポッドに1、2本のロケット弾を装着、一回の射撃
で1本のロケットを発射、それで、当たったの当たらないのと大騒ぎする。
当のロケットは、同じ条件で発射しても、同じ位置に着弾するとは思えないような、ランダムな動きを
して地上の標的に向かう・・・しかも射撃場の手前のダムや鉄塔を目印にして射爆場へ進入し、
印の付いた標的を狙うのだ・・・もう少し実戦に即した訓練が出来ないものかと、思うところだ。

索敵・奇襲・ドッグファイト・・・・
「ちょっと待った!、内容が操縦法方とは違うじゃないか」というメールを頂きました。
また、パソコンでフライトシュミレータを楽しんでいる多くのバーチャルパイロットの方々から、
「ドッグファイトについて書いてくれ」という要望もありました、そんなワケで、ちょっと軌道を
修正します。
エンジン始動などは、他の戦闘機と大差ないので割愛し、対戦闘機戦闘訓練(ACM)の様子を
少し・・・
戦闘機戦闘の基本は、索敵である。
そして奇襲により撃破することである。
よく戦技競技会に出場する機体に「見敵必殺」と書かれているのは、そういう意味からだ。
市販のフライトシュミレータには、ドッグファイトがミッションの中心を占めているものが多いが、
ドッグファイトとは、実は、索敵、奇襲が失敗した後の形なんである。
先の大戦ならいざ知らず、現代の戦闘機でドッグファイトを行うのは、パイロットにとって非常に
過酷な状況である。
戦闘機は、より高速、より高機動と進化しているが、パイロットだって生身の体、戦闘機に合わせて
進化など出来るわけない。
例えば、後ろを振り向いたら敵機を発見し、焦って急旋回、反転したとしよう、するとあなたは、
高Gにより、首を元に戻せなくなり、後ろを振り向いたままで逃げるという滑稽なことになる・・・
実際、ファントムの後席で計器を見た瞬間に、前席の機長が急上昇をかけたために、ヘルメットを
計器パネルにぶつけたまま、十数秒間、もがいてしまった事がある(恥)
大戦時代のエースパイロットは、敵機の後ろ30mまで寄って射撃を開始したというが戦闘機の
ドッグファイト訓練では、300m以内に近づくことは禁止されていた、危険だからだ。
(以下、工事中)
回避行動・・・・
F-1の写真
F-1エンジン音 (wav:79k:約7秒)
(wav:176k:約16秒)